暴言・徘徊がある親の介護施設の探し方【OT解説】

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はじめに

「デイサービスを利用しようとしたら、施設側から断られてしまった」
「暴言や介護拒否がひどくなり、これ以上自宅での介護が難しい。でも、施設に相談しても『うちでは対応が難しいかもしれません』と言われてしまう」

親や配偶者の介護をされているご家族の中には、こうした経験をされた方が少なくないのではないでしょうか。

認知症の周辺症状(BPSD)が強く出ている場合、施設探しは通常よりも難しくなることがあります。しかし、BPSDの内容や程度に応じて受け入れ可能な施設は必ず存在します。今回は、精神科領域での作業療法士としての実務経験も踏まえながら、BPSDがある方の施設探しのポイントを解説します。

なお、施設の種類そのものから知りたい方は、まず以下の記事をご覧いただくと全体像がつかみやすいと思います。関連記事: 介護施設の種類と選び方【初めての方向け】

BPSDとは何か

BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia、認知症の行動・心理症状)とは、認知症に伴って現れる行動面・心理面の症状のことです。

具体的には、以下のようなものが含まれます。

  • 暴言・暴力
  • 徘徊
  • 介護拒否(入浴拒否、服薬拒否など)
  • 妄想(物盗られ妄想など)
  • 昼夜逆転、不眠
  • 不安、抑うつ

これらは、認知症そのものによる記憶障害や理解力の低下(中核症状)とは区別され、本人の性格・環境・体調・周囲の関わり方など、さまざまな要因が絡み合って現れると考えられています。

つまり、BPSDは「その人固有の症状」というより、環境や関わり方次第で変化しうるものという側面があります。

作業療法士として支援に携わる中でも、「どういう場面で困りごとが起きているか」「どんな対応をしたときに落ち着いていたか」を丁寧に整理していくと、環境調整だけで症状が和らぐケースを何度も経験してきました。この視点は、施設選びにおいても重要になります。

なぜ「受け入れ施設探し」が難しいのか

BPSDがある方の施設探しが難しくなる背景には、主に次のような事情があります。

1. 人員体制の問題

暴言・暴力や頻繁な徘徊への対応には、通常より手厚い見守りや個別対応が必要になることがあります。施設によっては、人員体制の関係で十分な対応が難しいと判断されるケースがあります。

2. 他の利用者への影響

集団での生活・活動が中心の施設では、大声や暴力的な言動が他の利用者に影響を与える可能性が懸念され、受け入れが慎重になることがあります。

3. 医療的対応の必要性

BPSDが強い場合、投薬調整など医療的な関わりが必要になることもあります。医療体制が整っていない施設では対応が難しいと判断されることがあります。

こうした事情から、「施設に断られた」という経験をされる方が一定数いらっしゃいます。ただし、これは「その方が施設生活に向いていない」ということではなく、その施設の体制と、現在の症状の程度が合っていなかったというだけのケースも多くあります。

施設探しで確認したいポイント

作業療法士の視点から、施設探しの際に確認しておきたいポイントを挙げます。

1. 認知症ケアの実績・専門性

「認知症対応型」を掲げている施設や、認知症ケア専門士・認知症介護実践者研修修了者などの有資格者が在籍している施設は、BPSDへの理解が深い傾向があります。見学時に、スタッフの認知症ケアに関する研修体制について質問してみることをおすすめします。

2. 個別対応の柔軟性

大きな施設よりも、少人数制のグループホームなど、個別の生活リズムに合わせやすい施設の方が、BPSDが落ち着きやすいケースがあります。これは、環境の変化や刺激の少なさが、症状の安定につながりやすいためです。

3. 医療連携の体制

嘱託医の訪問頻度だけでなく、どこの医療機関と連携しているか、その連携先が信頼できる実績を持っているかまで確認しておくと安心です。精神科・神経内科との連携体制、緊急時の対応フローについても、具体的な医療機関名を聞いた上で、対応可能な範囲や実績を確認してみることをおすすめします。特に、投薬調整が必要になった場合にスムーズに動けるかどうかは重要なポイントです。

4. 生活環境・動線

徘徊がある方の場合、安全に歩き回れる環境(施錠管理された庭やフロアなど)が整っているかどうかも確認しておきたい点です。無理に行動を制限するのではなく、安全な範囲で行動できる環境があることは、本人のストレス軽減にもつながります。

5. リハビリ・活動プログラムの充実度

見落とされがちですが、リハビリテーションの実施体制や、レクリエーション・季節イベントなどの活動プログラムがどれだけ充実しているかも、施設ごとに力の入れ方が大きく異なる部分です。日中の活動に本人が興味を持てる内容があるかどうかは、生活リズムの安定やBPSDの軽減にもつながります。施設が「何に力を入れているか」を見学時に確認しておくと、本人に合うかどうかの判断材料になります。

6. 施設の雰囲気・職員の様子

見学時は、パンフレットや説明の内容だけでなく、その場の空気感にも注目してみてください。職員同士の表情、利用者への声のかけ方、忙しない雰囲気の中でも余裕を持って接しているかどうかは、実際に足を運んでみないと分からない情報です。

職員が楽しそうに、余裕を持って働けている施設ほど、利用者への接し方も自然と穏やかになります。これは作業療法士として様々な現場を見てきた中で、はっきりと感じてきたことです。言葉での説明以上に、表情や場の空気から伝わってくるものは意外と多いので、見学の際はぜひ意識して見てみてください。

施設の種類別・受け入れ可能性の違い

BPSDへの対応可能性は、施設の種類によっても傾向が異なります。

ただし、以下はあくまで筆者の実務経験に基づく一般的な傾向であり、実際の受け入れ可否は施設ごとの方針・体制・空き状況によって大きく異なります。 最終的な判断は、必ず個別の施設への確認・相談を通じて行ってください。

グループホーム
少人数制・地域密着型で、認知症ケアに特化しているため、比較的BPSDへの理解が深い施設が多い傾向にあります。ただし、施設ごとに受け入れ可能な症状の程度に差があります。

介護付き有料老人ホーム
施設によって体制の差が大きく、認知症ケアに力を入れている施設もあれば、そうでない施設もあります。見学・相談を通じて個別に確認する必要があります。

特別養護老人ホーム(特養)
公的施設のため費用面のメリットがありますが、入所待機者が多く、また医療的なケアが必要な場合は対応が難しいこともあります。

精神科病院への入院が選択肢になる場合
症状が非常に強く、在宅や一般的な施設での対応が難しい場合には、精神科への入院が検討されることもあります。ただし、これは本人の意思確認や医師の判断など、法律上・医療上の手続きが関わる領域です。この記事で詳しく扱う範囲を超えるため、該当する可能性がある場合は、まずかかりつけ医または精神科医、精神保健福祉士にご相談ください。

家族が事前に準備しておくとよいこと

施設探しをスムーズに進めるために、以下の情報を整理しておくことをおすすめします。

  • どのような場面で、どのような症状が出やすいか(時間帯・状況・頻度)
  • 現在服用している薬の種類と効果の実感
  • 本人が落ち着きやすい環境・関わり方(音楽、特定の話題、なじみのある物など)
  • 本人の趣味・嗜好・生活歴・職歴など、人となりを理解する手がかりになる情報

特に趣味や嗜好は、「なんとなく好きだったはず」ではなく、できるだけ具体的に伝えることをおすすめします。例えば「毎朝仏壇に手を合わせる習慣があった」「孫の話をするとよく笑っていた」といった、日常の一場面が伝わるレベルまで共有できると、施設側もケアの中に自然に取り入れやすくなります。

こうした情報は、施設側がケアプランを立てる際の重要な参考資料になります。施設見学の際に共有できるよう、簡単なメモにまとめておくとよいでしょう。

家族自身が「何を求めているか」を整理しておく

もう一つ、意外と見落とされがちなポイントがあります。それは、家族自身が施設に何を求めているのかを、一度自分たちの中で整理しておくことです。

正直にお伝えすると、介護に疲れ切ってしまった結果、「とにかく症状を抑えてほしい」「とにかく落ち着かせてほしい」という気持ちが先行してしまうご家族は少なくありません。それ自体は、決して責められることではなく、自然な感情だと思います。

ただ、それだけを求めるのか、それとも治療や生活支援を通じて本人らしい生活の質(QOL)を取り戻していく関わりを求めるのかで、選ぶべき施設の方向性は変わってきます。前者に偏った施設探しをすると、症状の「抑え込み」を優先する対応になりがちで、後になって「もっと本人らしく過ごせる場所を選べばよかった」と感じるご家族にも、支援の現場で何度か出会ってきました。

どちらが正解ということではありません。まずはご家族の中で、今何を一番求めているのかを言葉にしておくと、施設への相談や見学時の質問も的確になります。

入所後に大切にしたいこと

施設が決まった後も、意識しておきたいポイントが2つあります。

ケアプランの内容をしっかり確認する

入所後は、ケアマネジャーや施設のスタッフが中心となってケアプランを作成します。その際、BPSDへの対応方針が具体的に盛り込まれているか、本人の状態や希望が反映された内容になっているかを、家族としてもしっかり確認しておきましょう。「なんとなく任せておけば大丈夫」ではなく、内容に目を通し、疑問があれば遠慮なく質問することをおすすめします。

ケアマネジャーとは日頃からよく話をしておく

ケアマネジャーは、本人の状態の変化や家族の意向を、施設側と共有する重要な役割を担っています。入所後も定期的に連絡を取り合い、困っていることや気づいたことを伝えておくと、ケアプランの見直しや施設との調整がスムーズに進みやすくなります。「何かあったら連絡する」ではなく、日頃から少しずつ話しておくくらいの関わり方が、結果的に本人にとって良い環境につながります。

一人で抱え込まず、専門の相談窓口も活用を

施設探しは情報量が多く、家族だけで進めるのは負担が大きい作業です。特にBPSDがある場合は、「どの施設なら対応してもらえるのか」を一つひとつ問い合わせて確認するだけでも大きな労力がかかります。

そうした場合、施設探しの相談員に間に入ってもらい、条件に合った施設を絞り込んでもらうという方法もあります。症状の状況を伝えた上で、対応可能な施設を提案してもらえるサービスもあるため、一人で抱え込まず、こうした窓口を活用することも選択肢の一つです。

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面会のルールや頻度についても、事前に確認しておくと安心です。詳しくは以下の記事でまとめています。

関連記事: 施設の面会ルール・頻度について知っておきたいこと【作業療法士が解説】

入居時の私物のルールや、ケアマネジャーとの連携についても、事前に知っておくと安心です。詳しくは以下の記事でまとめています。

関連記事: 施設入居時に知っておきたい私物のルールと、ケアマネとの連携【作業療法士が解説】

まとめ

BPSDがある方の施設探しは、通常よりも情報収集や施設との調整に時間がかかることがあります。しかし、症状の背景や特性を理解した上で、施設側の専門性や体制を確認していけば、本人に合った受け入れ先は見つかります。

一つの施設に断られたとしても、それで諦める必要はありません。施設ごとに得意分野や体制は異なります。まずは地域包括支援センターやケアマネジャーに、今の困りごとを率直に相談してみることから始めてみてください。


本記事は、作業療法士としての臨床経験を踏まえた一般的な情報提供を目的としています。個別の症状や状況については、かかりつけ医や地域包括支援センター、介護支援専門員(ケアマネジャー)にご相談ください。

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