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はじめに
「施設に入ってから、急に歩けなくなった」
「自分でできていたことも、いつの間にか職員さん任せになっていた」
介護施設に入居された方のご家族から、こうした声を聞くことがあります。
施設に入ることで、安全な環境と見守りが手に入る一方で、生活そのものが「受け身」になりやすいという側面もあります。この記事では、入居後にADL(日常生活動作)が落ちにくい施設を見分けるポイントを、作業療法士の視点から解説します。
なぜ入居後にADLが落ちやすいのか
自宅での生活では、着替え、トイレ、移動、家事の一部など、本人が無意識のうちに体を動かす場面がたくさんあります。
施設に入ると、安全確保のためにスタッフが手を貸す場面が増えます。これ自体は悪いことではありませんが、「本人ができることまで、周囲がやってしまう」状態が続くと、使わない機能から少しずつ低下していきます。
これは「生活不活発病」と呼ばれる状態で、体を動かす機会が減ることで、身体機能だけでなく気力そのものが落ちてしまう状態を指します。動かないから機能が落ち、機能が落ちるからさらに動かなくなる、という悪循環に陥りやすいのが特徴です。だからこそ、施設選びの段階で「本人の力を活かしてもらえる環境かどうか」を見極めることが大切になります。
ADLが落ちない施設を見分けるポイント
1. リハビリテーションの実施体制
まず確認したいのは、リハビリが「制度として存在するか」だけでなく、「実際にどれだけの頻度・時間で行われているか」です。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が配置されているか、個別リハビリの時間はどれくらい確保されているか、集団体操だけで終わっていないかを確認しましょう。
数字として頻度や時間を聞くことも大切ですが、それ以上に参考になるのが、決められたリハビリの時間以外にも、入居者が自主的に体を動かしている場面が見られるかどうかです。廊下を歩く練習をしている人、自室で軽い運動をしている人がいる施設は、リハビリを「特別な時間」ではなく「生活の一部」として根付かせている傾向があります。
2. 施設がリハビリにどれだけウエイトを置いているか
制度上リハビリの体制があっても、施設の運営方針として「リハビリに力を入れているか」は別の話です。パンフレットや見学時の説明で、リハビリや機能維持がどのくらい強調されているかは、その施設の姿勢を知る手がかりになります。「できることは自分でやってもらう」という考え方が浸透している施設かどうかは、実際に生活の様子を見てみないと分かりません。
3. リハビリスタッフ・介護スタッフの質
有資格者が在籍しているかだけでなく、スタッフが「本人のできることを見極めて関わっているか」も重要です。何でも手伝ってしまうスタッフばかりだと、本人の力を発揮する機会が減っていきます。見学時に、実際の介助の様子を見せてもらえると、スタッフの関わり方の傾向がつかみやすくなります。
4. 職員数と施設の規模感
職員一人あたりが担当する利用者の人数が多いと、どうしても「時間をかけて見守りながら本人にやってもらう」余裕がなくなり、効率を優先して介助してしまう場面が増えます。正直なところ、規模の大小を問わず、介護現場は基本的にマンパワー不足の傾向があります。その中でも、大きな法人が運営する施設は、比較的人員体制が整っていることが多い印象があります。
見学時に、職員数を直接尋ねるだけでなく、デイルームに出ている入居者の人数や、施設内を自分の足で歩いている人がどれくらいいるかを、実際に自分の目で見てみることをおすすめします。日中、部屋にこもっている人が多いのか、共有スペースで活動的に過ごしている人が多いのかは、その施設の「本人の力を活かす」姿勢が表れやすいポイントです。
見学時に確認したい質問
上記のポイントを踏まえて、見学時には以下のような質問や確認をしてみることをおすすめします。
- 個別リハビリと集団体操、それぞれどのくらいの割合ですか
- 「できることは本人にやってもらう」という方針はありますか
- 職員一人あたりが担当する利用者の人数はどれくらいですか
- (自分の目で)デイルームに出ている人数、施設内を歩いている人の多さ
- (自分の目で)リハビリの時間以外にも、入居者が自主的に体を動かしている場面があるか
見学後、家族としてできること
ここまでは施設の見分け方についてお伝えしましたが、良い施設を選べたとしても、それだけでADLが自動的に維持されるわけではありません。入居後、家族として関われることもあります。
- 面会時、代わりにやってしまうのではなく、本人のペースで一緒に体を動かす時間を持つ
- 自宅で得意だったこと・好きだった動作(庭いじり、料理の下ごしらえなど)をスタッフに伝え、施設での活動に取り入れてもらえないか相談する
- ケアプランの見直しの際、リハビリの実施状況や、日中の過ごし方(デイルームで過ごす時間、歩行の様子)を具体的に確認する
施設に任せきりにするのではなく、家族も本人の「できること」に関心を持ち続けることが、ADLを維持する一つの支えになります。
面会のルールや頻度についても、事前に確認しておくと安心です。詳しくは以下の記事でまとめています。
関連記事: 施設の面会ルール・頻度について知っておきたいこと【作業療法士が解説】
まとめ
施設に入居した後も、本人の力を活かせる環境かどうかは、施設によって大きく差があります。リハビリの実施体制だけでなく、施設がどれだけリハビリを重視しているか、スタッフの質、職員数と規模感まで、見学の際に多角的に確認することをおすすめします。
暴言・徘徊などBPSDがある場合の施設選びについては、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事: 暴言・徘徊がある親の介護施設の探し方【OT解説】
関連記事: 介護施設の種類と選び方【初めての方向け】
関連記事: 大津市で介護施設を探す方へ【相談窓口まとめ】
入居時の私物のルールや、ケアマネジャーとの連携についても、事前に知っておくと安心です。詳しくは以下の記事でまとめています。
関連記事: 施設入居時に知っておきたい私物のルールと、ケアマネとの連携【作業療法士が解説】
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本記事は作業療法士としての臨床経験を踏まえた一般的な情報提供を目的としています。個別の状態については、かかりつけ医やケアマネジャーにご相談ください。


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